旅人の思いを満たす
kita alps traverse route
その魅力と裏側のストーリー

古からの伝統を大切にしながら、新しい文化を醸成し続けている信州・松本と飛騨・高山。その二つの街のあいだに標高3,000mの峰々が連なる北アルプスを有するこのエリアは、大きな自然と自然のそばで育まれてきた文化を堪能できる旅のディスティネーションです。
自然に目を向ければ、険しい岩山、森林、渓谷、高原と、多様でダイナミックな景観が見られ、希少な動植物との出会いがあります。また、四季を通じて登山、シャワークライミング、スキー、スノーシューなどの多彩なアクティビティを堪能できます。
山麓に目を向ければ、森林資源や水の恵みなどを享受しながら人々が育んできた文化や歴史があり、山の恵みを郷土料理や日本酒、温泉などで味わうことができます。

「大自然に触れて、おいしい食事や温泉で日々の疲れを癒すことができる」 「美しい景色や新しい体験を楽しめて、訪れるごとに新しい出会いがある」 「地域の方々のあたたかなおもてなしに触れて、人間関係を深められる」 「特有の文化や歴史を学び、知識を豊かにできる」 「自分自身が成長できるという実感をもてる」

これらの体験が可能で、何度も訪れたくなる魅力をもつ「Kita Alps Traverse Route」。
ここでは、このエリアのポテンシャルと、魅力を保持し続けるために行われている活動についてご紹介します。

水の恵み、木の恵み、火山の恵み

北アルプスの豊富な雪解け水。伏流水となって湧き出す軟らかな水は、山麓でおいしい農作物を育んでいます。仕込み水として醸される日本酒には、杜氏の伝統の技が受け継がれていて、松本、高山それぞれに個性豊かな蔵元が数多くあります。

森林資源の宝庫でもあり、広葉樹の材木を生かした家具や工芸品などのクラフト文化も伝統的に受け継がれています。一般的に流通している国産木材のほとんどは、加工のしやすさから人工林で育てられた針葉樹。ですが、この地域では豊富に生息する樹木を使うことで、森の生物多様性を守り、土壌や伏流水の質を維持するというアップサイクルを行なっています。

また、火山の恵みである温泉が点在しています。街の喧騒から離れた静かな里にあり乳白色の温泉が名高い白骨温泉、日本一を誇る数の露天風呂をもつ奥飛騨温泉郷、山歩きで疲れた体を癒やすには最適な沢渡温泉。それぞれで異なる泉質と雰囲気を楽しむことができます。

地域の人との出会い

自然のそばで暮らし、その魅力を知り尽くす地域の人たちとの出会いは、Kita Alps Traverse Routeを訪れる楽しみのひとつです。郷土料理をいただきに食事処を訪れたり、工芸品などのお土産物を探しに雑貨店に立ち寄ったり、温泉や宿で滞在したりする際には、山の恩恵を受けながら生きる人々の話に耳を傾けてみてください。

自然のなかへ一歩ふみ入るときには、ガイドを依頼するのもおすすめです。たとえば上高地では生態系への知識豊富なガイドさんが、乗鞍では自然を最大限に遊ぶためのアクティビティに精通したガイドさんが、すばらしい学びと体験の時間を提供してくれるはずです。

自然との共生

美しく多彩な自然を、人々が利用しながら保護を促進する試みが、さまざまな形で行われています。たとえば、乗鞍岳の山麓に位置する広大な森林地帯の五色ヶ原の森は、全エリアでガイド同行の入山を義務付け、森を保全しながら、来訪者に五色ヶ原の森の価値と人との共生について伝えるきめ細かいガイドを行なっています。

また、乗鞍高原では日本第1号のゼロカーボンパークとして地域一体となった取組みを行なっています。たとえば、放牧で草原を維持していた一の瀬は、放牧をしなくなったことで急速な森林化が進んでいますが、環境省、松本市、地元住民による修景伐採作業により、人と自然の共生の象徴である草原景観の維持に取り組んでいます。

豊かな生物多様性

北アルプスには狭い地形のなかに大きな標高差とさまざまな地形が存在するため、豊かな植物相が育まれてきました。 ツキノワグマやニホンカモシカなどの大型哺乳類のほか、ライチョウ、ホシガラスなどの鳥類、 タカネキマダラセセリ、クモマツマキチョウなどの高山蝶といった野生動物が生息しています。 そして、これらの貴重な生態系・生物多様性を守るためさまざまな活動が行われています。

とくに近年、注力しているのは、氷河期の生き残りといわれるライチョウの保護。人間活動の変化や気候変動により、2000 年代には約1700 羽まで減少してしまいました。そのため、生息実態調査や登山者への普及啓発、地域のボランティアも参画しながらの保護活動が活発化しています。生息域外保全として、国内の動物園において飼育・繁殖の知見の集積も行われています。

美しく歩きやすい登山道

北アルプスでは、行政機関だけではなく、山小屋が収益の一部を持ち出して、雪切り、倒木処理などの維持や、木橋の更新、石積みなどの補修作業を行ない、登山道を整備してきました。しかし、ヘリコプター輸送費の上昇や大雨などによる被害の増加、 新型コロナウィルス感染症流行によって、これまでの体制では維持が難しくなっています。 一方で、行政機関による一元的な管理も難しい状況です。また、山岳利用の歴史や地域の特性、関係者の関わり方によって、北アルプスのなかでも維持の方法が複雑に異なっています。そこで持続可能な登山道維持の実現を目指した取り組みの第一歩として、長野県側(槍 穂・常念山脈)から協力金を集める実証実験

「北アルプストレイルプログラム」が 2021 年より始まりました。旅人が山岳エリアでのルールやマナーを守り山小屋への負担を減らす、 といった心がけも、登山道を未来につなぐために欠かせません。

北アルプスのそばで自然の恵みを享受し、地域の人と出会い、この地で育まれてきた文化を知る。滞在を重ねるほどに新しい発見があり、深い魅力に触れることができる「Kita Alps Traverse Route」。このエリアが、未来永劫、旅人に愛されるディスティネーションであり、暮らす人にとって誇りある場所であり続けるために。私たちは、伝統を守りながら、美しい自然とともに歩み続けます。